一本一本の線にこだわり、試行錯誤を繰り返す「おばかめ」のスケッチ=東京都内(やましたさん提供)

 11日、朝刊広域面でスタートする連載「おばあちゃんとかめ」。通称「おばかめ」への思いを、絵本作家でデザイナーの作者やましたこうへいさん(52)に聞きました。(大盛周平)

 -キャラクターデザインや絵本の著作が数々あるやましたさんですが、おばかめは「漫画」という表現方法です。

 世に出すものになると思っていなかったので、新型コロナウイルス禍に入って時間もあったから、絵本にして母にプレゼントしようと思っていたんです。その時、絵本の形より、漫画ならもっと面白く描けるかもと思ったんです。それがたまたまこういう形になりました。

「おばあちゃんとかめ」のイメージカット

 -デフォルメされた「おばあちゃん」と、リアルさを保つカメとが対比的ですね。

 大学(大阪芸大)時代、ピカソの抽象がなぜあの形になったのかを理解するのが一つのテーマでした。漫画も一つの抽象だと思っていて、難しいんだけれど、自分を表現しやすいのかもしれません。手塚治虫先生や東映のアニメとかが大好きだから、というのもあるかなあ。

 でも同時に、漫画的だけどうそはついていない、ということを大事にしています。昆虫や動物のことを分かって描いているかどうかって、例えば子どもたちは感じる、分かるんですよね。

やましたさんの仕事机と「おばあちゃんとかめ」のスケッチ=東京都内(やましたさん提供)

 -読者のみなさんに。

 人間が思っている以上にカメや生き物ってちゃんと生きている、意識をもっているんですよね。いろんな生き物がいて地球が成り立っていることを再認識したいな、という思いで描いてもいます。

 あとは、「普通の人」と思われている人でも、意外とみんなそれぞれに面白い面がある。そういうことを「おばかめ」を通して描けないかなと思っています。(モデルの)うちの母は特殊な人では全くないんですが、母をカメの視点からクローズアップしたら、こんなに面白い人だったんだと気付いたんです。

 日常にあるちょっとした不思議や面白さ。そんなことに気付くきっかけとなる作品にしていきたいと思っています。ぜひお楽しみください。

【やましたこうへい】デザイナー、絵本作家。1971年熊本生まれ、神戸育ち。大阪芸術大卒。大阪・関西万博公式キャラクター「ミャクミャク」の作者。絵本・児童書多数で近著は絵本「きょうりゅうゆうえんち」(ポプラ社)。