神戸新聞朝刊と神戸新聞NEXTで月2回掲載している漫画「おばあちゃんとかめ」(通称おばかめ)は、この4月下旬で連載開始から半年を迎えます。最新の第12話を掲載する4月27日から5月10日までの2週間、神戸新聞NEXTにて全話を期間限定で無料公開します。公開に先立ち、おばかめ作者で絵本作家、デザイナーのやましたこうへいさんに、これまでの話から印象深い5こまを選んでもらいました。

■主人公~第5話「おばあちゃん かめを飼う」より

 おばかめはもともと、やましたさんが絵本にすることを想定して構想を練っていたものです。ニホンイシガメの「イシちゃん」(右)とウンキュウの「キュウちゃん」という主要キャラクター2匹を描いたこの1こまについて、やましたさんは「このお話をイメージした当初から、何度も何度も描き続けていたのがこのカットです」と言います。「リアルと漫画のあいだ」という、やましたさんの絵の特徴が詰まったこまでもあります。

■実話がベース~第3話「2匹のかめの足音」より

 おばかめは実話を基にした創作漫画です。こたつに入るカメのシーンも実話ですが、やましたさんは「読者のみなさんの感想を読ませていただき、飼っているカメが同じようにこたつに入っている、という方がいることが分かりました。共感してもらえているのがうれしいです」と話します。

■カメの生態~第6話「かめたちの名前」より

 やましたさんが12話の中で「一番よく描けた」というのがこのこまと言います。おじいちゃんに触れられて甲羅の中に入ったり、顔だけ出したりという動きとその雰囲気。イシちゃん(手のひら下のほうのカメ)の甲羅がぺたっとしている感じ。「カメを好きな方は分かってくれるかな」。カメの生態を(時にマニアックになりがちですが)しっかりと描くのも、本作品の魅力です。

■縦長こま~第4話「おばあちゃんの女子会」より

 おばかめは4こまを6列に並べていますが、こまは時に“ドッキング”します。「おばかめは単に4こまを並べるだけじゃないというのを狙っていて、いい感じに描けたのがこのこまです。おばあちゃんではない他の人がカメを見て驚く様子を、縦長のこまで表すようにしました」とやましたさん。おばかめは、鉛筆、水彩、デジタルでの処理を駆使して、こまをつくりあげています。背景の色味も、このこまのこだわりポイントです。

■夫婦の会話~第12話「かめ日和」より

 やましたさんが最後に選んだのは、4月27日に公開する第12話から。こだわりの1こまを先にお見せします。

 おばかめは第5話から、おばあちゃんがカメを飼い始めた10年ほど前にさかのぼっています。散歩をするおじいちゃんとおばあちゃんが何げない会話をしているこのカットは、カメを飼っているからこそ生まれたものです。

 「カメでもなくていいのですが、身近なものの存在で日常が変わるんですよね。このこまは一番やりたいことの一つの到達点なんです」とやましたさん。ふとしたことから何げない日常に楽しさを見いだしていく-。それがおばかめの大きなテーマです。

 12話はまた、兵庫県の風景をイメージして描かれています。やましたさんは神戸出身で明石高校美術科の卒業生。「なじみ深い明石公園や(家族で訪れる機会が多い)たつの市の室津を思い浮かべました」。乞うご期待!